
7月7日、パリで行われた冬物のオートクチュールコレクションに、一時代の終焉を感じた方も少なくないのではないでしょうか。このような最先端の服は、世界中でほんの一握りの女性しか手に入れることができないのに、今は百年に一度とも言われる大不況の真っ只中。派手なベルトを使うことさえ控えていたようで、なんとも物悲しい有様でした。
そしてこの日、クリスチャン・ラクロワの最後になるかもしれないショーが行われました。数日前に発表された素晴らしいコレクションに誰もが息をのみましたが、"財政難"という壁がクリスチャン・ラクロワの前に立ちはだかっていたのです。
財政に悩まされているのはラクロワだけではありません。今年初頭、あるイタリアの高級繊維会社のCEOは、会社の設立記念日を祝う予算がないと言っていました。「誕生日ケーキが買えるかどうかも危ういよ」とも。
また、ニューヨークの有名百貨店ヘンリ・ベンデルはデザイナー服の販売を取り止めました。今秋から徐々に、ジュエリーやハンドバッグ、香水やギフトなど、やや低価格の商品に絞っていくとのこと。このような、服の付属品ともいえるアクセサリー類はコンスタントに売れる傾向が強く、小売業者やアパレル企業の頼みの綱とも言えます。ファッションショーの中でもオートクチュールのショーは特にブランドイメージや宣伝効果を高める目的で行われます。それにしても、ヘンリ・ベンデルがデザイナー服の販売を止めるなんて残念です。学校の人気者が、実はゲーマーだったことが分かった時と同じくらい、ガッカリせざるを得ません。
高級品業界(特にファッションとジュエリー業界)は、ここ何年も試行錯誤を重ねてきました。ダナ・トーマス氏は2007年に発売された著書『Deluxe: How Luxury Lost Its Luster(高級品はどうやって輝きを失ったか)』で、なぜ1,570億ドル(14兆6,000億円相当)規模の高級品業界が、彼らの要である独自性を軽んじて、大量販売の道を選んだのかについて詳しく述べています。
一方、ファッション業界の落ち込みを予測していた人もいます。高級品業界のリサーチ会社The Luxury InstituteのCEOミルトン・ペドレッツァ氏は「昔ながらの考え方に捉われていてはいけません」と語っています。時代に取り残されないブランドであり続けたいなら、いつか、従来のやり方を変えなければいけないというわけです。さらにペドレッツァ氏は、「多くの人がブランド品とは名ばかりで、実際は、ごくありふれた商品だと感じています。ブランド品とは素晴らしいデザイン、優れた品質、伝統、サービスを誇る商品だという根本に立ち返る必要があります」とファッション業界に警鐘を鳴らしています。
女性服では、特にバレンシアガとプラダの前途は明るいようです。この2つのブランドは、シーズンを追うごとに新しいデザインを打ち出し、多くの模倣品が市場に出回るほどです。人々はいつの時代も最先端のデザインを手に入れたいと願うものなのでしょう。
また、社会的責任を重んじ、慈善活動を行い、環境に配慮したビジネスを展開する人道的な会社もあります。高級百貨店ヘンリ・ベンデルは、ニューヨーク出身のUlrica lanaro、 Mariso Brown、 Lillian Sternが設立したジュエリー会社Treを出店しました。Treは"サイズが大き目の高価なイタリアガラス製カクテルリングが売れるたび木を植える"という植樹活動を行っています。"オシャレで手の届きそうな値段の贅沢品を扱いつつも、地球に優しい"という、新しいブランドの在り方を実践しているといえるでしょう。
どれだけ手間がかかったか、あるいは人気があるかよりも、商品の造り自体を考慮しているエルメスのようなブランドについては、今後も目の利く顧客達の信頼を勝ち取り続けることが予想されます。
しかし、今後は贅沢品を買う人も減り、有名ブランドが姿を消していく日が来るかもしれません。消費者がブランドを頼りに商品を選んでいた時代は終わったのです(ブランド物を着ていれば洗練されて見えるわけじゃないと気づいたのでしょうか?)。ゼニアの白いシャツとギャップの白いシャツは大差ないと考える人も増えてきています。消費者は高価であればいいとは考えなくなってきているのです。これは良い傾向かもしれませんね。





















コメントを追加